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気ままな場所

主にオーガスト系のゲームとかのSSや類する小ネタ等を書いていこうと思います

夜明け前より瑠璃色な SS   『音と気持ちの相関関係』

「朝霧君、来てくれないかな・・・?」
今日は今まで一生懸命練習してきた吹奏楽の発表会の日である。
もちろん私と麻衣を始め、吹奏楽部の部員は市内のホールに集合して、今は近くの公園でそれぞれ音を出しながらウォーミングアップ中である。
私も適当な場所で音を出していると麻衣がやってきて
「遠山先輩、何だか調子があまりよくないんじゃないですか?」
「あ、麻衣か。そ・・・そんなことないよ。大丈夫だから・・・」
「でも・・・絶対おかしいです。間違いなく何か悩んでいますよね!!」
麻衣とは結構長い間顔をつき合わせているから分かっちゃうのかな?
「やっぱり麻衣には隠せないな・・・」
「そりゃもう私が入学してからほとんど毎日見ている顔ですからね。先輩の考えている事は何となく分かるつもりですよ」
「そりゃ大したもんだ。うん・・・何となく不安なんだよね。最後だから確かに悔いを残さないように今まで一生懸命練習はしてきたけど・・・」
「あ――――、確かに最後の大会ですから悔いだけは残したくないですよね。でも・・・本当の悩みの原因というのはそれですか?」
「・・・う、うん」
「絶対にウソですよね。私の目を見て言えますか?」
麻衣が『じ―――』っと私の目を見つめてくる
「うわっ!!完全に見透かされているのか!!」
「先輩が分かりやすいんですよ」
「巧みに隠していたつもりなんだけどな」
「どこがですか?もうバレバレなんですけど。本当は見に来て欲しいのにお兄ちゃんに今日のこと話していないんでしょ?」
「ゲッ・・・!!」
飲み込んだはずの反応が言葉になって出てしまった。
「やっぱり図星だ~。でも今日発表会があることは一応私がお兄ちゃんには話しの中で出しておいたから間違いなく知っているはずですけどね」
「うぅぅ・・・、ホントによく出来た後輩を持って遠山さんはうれしいよ・・・」
「あとは先輩の祈りが通じるかですよね。頑張ってください」
「何を頑張るのよ。ってか今日は麻衣も頑張る日だからね」
「それとは話は別です。『一心岩をも通す』ですよ。心を込めて祈ればきっとお兄ちゃんに届きますから」
「・・・アンタいつから宗教家になったのよ?」
「えへへ、じゃ頑張ってくださ~い!」
麻衣は笑いながらフルート組の所へ走っていった。その姿を見ながら
まったく・・・私の教育方針が間違ってたかな・・・?

でも麻衣と雑談をしていたらその時は何となく少しは気持ちが楽になった気がした。
でもまたすぐに不安が襲ってきた。
麻衣も鋭いな・・・実はその通りなんだよね。
本当は朝霧君に告白してそのまま誘って今日の私の晴れ舞台を見に来て欲しかった・・・けど出来なかった。
こんな自分がすっごく情けなかった。
どうしよう・・・体の震えが止まらないよ・・・このままだと間違いなく失敗する・・・どうしよう・・・どうしよう・・・
「翠、大丈夫?何だかいつもの翠じゃないみたいだけど?」
仲間が心配して声を掛けてくれた
「え?あ!!そ、そう?何でもないよ。だ・・・大丈夫だから・・・」
「本当?いつもならムダにやかましいのが今日は妙に静かだからどうしたのかな?と思って」
「“ムダにやかましい”とはどーゆーコトじゃい!!コラ!!」
「わ―――!!うん、翠はやっぱりこうでなきゃね」
「どんだけ――――!!」
「よかったよかった。でも悩みとかあるのなら聞くよ。友達じゃん」
「ありがと。もう大丈夫だから」
「そう?ならいいんだけどね・・・リラックスだよ!リラックス!!」
「うん・・・ありがとね」

気を取り直して再びクラリネットを構えて音を出すがやっぱりいつもの音じゃない。
どうしてだろう?こんなことは今までなかった。
自分愛用のクラリネットのはずなのに全然手につかない。まるで他人のを使っているみたいだ。
このままじゃダメだ・・・と思いながら必死で音を出すが、やればやるほどマイナス方向へ向かっているのが自分でもよく分かる。
「翠。まだやってるの?時間だよ」
「あ、うん。わかった・・・」
結局何の成果もないまま練習を切り上げてこのまま本番に臨まなければいけなくなってしまった。

控え室で待機している間も体の震えが止まらない。
「スタンバイお願いします」
係員の声がした。
「さぁ、行くよ!!」「オ―――!!!」
みんなで気合入れを行うが全然気合が入らない。
お願い!!もし神様が本当にいるなら朝霧君をこの会場に連れてきてください!!このままじゃ私、本当にボロボロになっちゃうよ・・・。
ステージに向かう足がブルブル震えている。
自分の席に座り愛用のクラリネットを構える、が全然手につかない。

もはやこれまでか・・・と思い、ふと顔を上げたその時・・・たまたま見た客席には一人の男子の姿が!
「あ・・・朝霧君!!来てくれたの?」
少し遠くではあるがその姿は絶対に見間違えるわけがない。
次の瞬間私の体内にパワーと自信がみなぎってきた。
“今の私なら絶対に出来る!!”
指揮棒が振り上げられ演奏が開始された。
するとついさっきまでボロボロだったはずの音がいつも以上に生き生きとした音になっていた。
ついでにその音につられたのか分からないけどみんなの演奏まで生き生きと盛り上がってきた気がした。
す・・・すごい!!何なの?この盛り上がりは・・・何だかわからないけどすごいよ!!気持ちいいよ!!
私達の演奏に客席までが手拍子で答えてくれている。
そして物凄い盛り上がりの中で演奏は終了した。
客席は割れんばかりの拍手の嵐。
何て気持ちいいんだろう!!吹奏楽をやってきてよかったと思う瞬間だ。
その拍手に送られてステージを後にする。

私は外に出て深呼吸をした。
「もうこれで・・・悔いはないな。思いっきりできたし・・・」
「遠山先輩、凄かったですね。さっきとは見違えた演奏でしたね。何だか先輩の元気に私もつられちゃったみたいです」
「あ、麻衣。ありがとうね。それと心配かけてゴメン」
「そんな。いい演奏が出来たんだからいいじゃないですか」
「お疲れ、遠山、麻衣」
「あ、お兄ちゃん」
「朝霧君、来て・・・くれたんだね。・・・ありがとう」
「何か遠山に呼ばれたような気がしてさ、気がついたらここに来てた」
「うわっ!!それって何かモロどっかのドラマの話みたいだよ」
「でも遠山先輩の願いが通じたんですよ。私の言った通りじゃないですか?先輩の熱い願いが岩をも通してお兄ちゃんに伝わったんですよ」
私は顔を真っ赤にして
「あ!!コラ!!麻衣、余計な事を!!」
「何かあったのか?遠山」
「な・・・何でもない!!」
「そ、か。じゃ俺は帰るな」
「あ・・・朝霧君!!」
「ん?何?」
「いや・・・何でもない・・・今日は見に来てくれてありがとね」
「あぁ、じゃぁな」
帰っていく後姿に向かって麻衣が
「ったく、お兄ちゃんってホント鈍感なんだから・・・。遠山先輩、いいんですか?このまま返らせちゃって?」
「・・・まったくだよね。私も人にはあーだこーだと言いたいコト言ってる癖に自分のこととなるとからっきしダメだよね」
「も―――、早くしないと私か菜月ちゃんがお兄ちゃんを横からかっさらって行っちゃうぞ!!」
「そりゃ困る・・・って菜月はともかくアンタは妹じゃんか―――!!」
「えへへ、でしたでした」
でも私の願いが通じてくれたのはうれしいな。今日は神様に感謝だね。
このまま私の気持ちに気付いてくれたらもっとうれしかったんだけどな。

よし!!決めた!!
いつまでも弱気な気持ちでいるのは私らしくない!!
昨日までは楽器の腕を磨いてきたけどこれからは女っぷりに磨きをかけて朝霧君に猛烈アタックするぞ!!
「朝霧君、絶対に逃がさないからね!!」

「と、遠山先輩・・・何だか獲物を狙うハンターの目に・・・なってますけど・・・」




あとがき
遠山さんは個人的にもかなり好きなキャラなので遠山さんをメインにしてSSを書きたいと思う気持ちはかなり前からあったのですが、なかなかいいネタが見つからなかったため先延ばし状態になってましたがようやくここにきて書くことができました。
まぁ遠山さんらしさが出ていればいいんですけどね。



追記

やまぐうさんSS「錯視錯に溺れる」
はい。間違いなくこういうのも期待しておりました(コラ・・・)
もっとも自分でも頭の中にはある程度の妄想はあっても実際に文にするとなるとなかなかこれが・・・


早坂さんSS「楽屋裏狂想曲~去りゆく夏の終わりに~」
ある意味シスター天池は会長の上を行く大物ですな(笑)
プールに落とされることを見越して水着を着ているだけならともかく・・・それがスクール水着とは絶対反則でしょう!!思わず想像してしまったじゃないですか!(自爆)


TMさんSS「1日の始まりと、終わりと」
今回は予告編ということでこれからが楽しみです。
それにしても最後の一文・・・怖いです



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E-mail:morn-8.10@ninus.ocn.ne.jp(@は半角で)



『夜明け前より瑠璃色な-Moonlight Cradle-』は2009年2月27日に発売です。