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気ままな場所

主にオーガスト系のゲームとかのSSや類する小ネタ等を書いていこうと思います

夜明け前より瑠璃色な SS     『もうひとりのあなた』

本日は特に表ネタはナシでSSのみです(^^;

まぁ、この手のネタも久しぶりですね。


というわけで ↓




夜明け前より瑠璃色な SS 『もうひとりのあなた』


先日私はターミナルから帰ってきた。
500年ぶりに見た街の景色はあの時と全く変わっていた。
落ち着いてから私は街中を見てまわった。
しかし……500年前にタツヤと一緒に見た景色はもう既に見る影もなかった。
もちろん山や川といった自然のものは別だけど。
月人居住区にあった礼拝堂といった一部文化財級の建築物として残されているのもあるが、どれも老朽化しており既に立ち入り禁止となっている。
そして私がタツヤ達とあの一週間を過ごした家も、そして隣接していた美味しいお料理を食べさせてくれた料理店も既になく、そこには近代的な建物が建っていた。
その光景を見て何だか寂しくなった。
「あの時の想い出はもうここにはないんだ……」


それからの私は自分の研究成果及びターミナルの技術の引継ぎとともに、この技術をさらに熟成させて実用化するべく研究所で研究を続けている。
そしてここで私は数名のスタッフを与えられて、主任研究員という役職を与えられた。
まぁ、簡単に言うと班長クラスとでもいうのかな? もっともここでの私はチーフと呼ばれてるんだけど。
1200年前の私も確か所長クラスの扱いを受けていたんだけど、その時と違うのは今は一通りの技術が確立されているからか、気分的に比較的自由な……と言うか余裕を持って研究に打ち込めることである。
そういえばあの時は戦争絡みでの研究だったから今と比べるとアグレッシブだったようなと言うかある意味命がけという感じが無きにしも非ずと言うのか……。

そして私のチームスタッフの中には最初にターミナルに連絡をしてきたあの人物もいるのだが……
「チーフ、ここまでの解析データです」
コンソールに向かって解析結果をまとめている私のデスクにやってきたのはターミナルに最初に連絡をしてきてくれた、そして私の懐中時計とあの写真を大切に持っててくれたあの人。
「ありがとう。あ、そう言えばアサギリ君……」
「はい、何でしょうか?」
「突然だけど、あなたは御先祖の朝霧達哉のお話とかはどういったことを知ってるのかしら?」
「朝霧達哉……ですか……。私もお預かりした時計と写真意外では特別には……。結局のところ先日お渡しした資料程度ですね。何せもう500年も前の話ですし、それにそんなに時間も経つと伝承なんて誇張されたり美化されたりであまり当てにはなりませんしね」
「そう……よね、ありがとう」
「申し訳ありません。お役に立てませんで」
「いえ、仕方がないわ。それじゃ引き続き解析の方をお願い」
「分かりました」
500年も経つと子孫とはいえ血は薄れてしまうのね。
それに彼は既に妻子ある身なので、私に対して特別な感情は持っていないみたい。
最初は彼も私に“会えて嬉しい”なんて言っていたし、実際に会ってからも話をした。けれどそれは彼の研究者としての自然な欲求であってターミナルや空間跳躍技術についてのコトばかり。
今は上司と部下という付き合いね。
ま、彼も一人の研究者ということなんでしょう。
それより彼って何故か私に対して敬語を使うのよね。確かに役職が私の方が上というのは分かるんだけど、どう見ても彼の方が見た目年上だし。
前にそのことを言ったら『でも歳はチーフの方が遥かに上ですから』だって。
そりゃ確かに私は1200年も生きてることになってるわよ。でもだからってまるでオバサンみたいに言わなくてもいいじゃない……。
以前みたいに子供扱いされるのもイヤだけどオバサン扱いもね~~。女心というのは複雑なのよ。
もっとも私も彼を“アサギリ君”と年下呼ばわりしてるからお互い様なんだけど。
まぁ、私はタツヤ……或いはタツヤ以上の器の男性でないと付き合う気もないしね。このハードルが高いのか高くないのか分からないけど。

そして再び私はコンソールに向かうとキーボードを打ち始めた。


今日も研究漬けの1日が終わった。
帰り支度をして玄関に出ると
「う~~~~ん。今日も一日頑張った……っと」
すると
「シア、今終わりか?」
「あ、お姉ちゃんも終り?」
「あぁ」
「それじゃ一緒に帰ろう」
「あぁ……」
ん? お姉ちゃん、どうしたんだろう? まぁ、毎日研究漬けだといろいろ考える事はあるよね。その気持ち分かる分かる。
とは言うものの、以前に聞いた話ではお姉ちゃんの研究しているロストテクノロジーという分野は担当範囲が結構広いらしいから私もお姉ちゃんが今何を専門で研究しているのはよく分かっていないんだよね。
大体一口にロストテクノロジーといっても色んなのがあってそれぞれできることが違うから私も話を聞いてると頭の中がゴチャゴチャになってくるわけ。
こう見えても私も一応科学者の端くれだから興味はあるんだけど、何せ私の専門外のことも結構あり過ぎるのよ。
だから今では聞く気もしなくなったのでお姉ちゃんが今何をやってるのかよくわからない。
まったく……お姉ちゃんもよくこれだけのことをやってると思うよ。もうここまでくると尊敬というか呆れるというか……。



それから幾日か経って
あのときからどうもお姉ちゃんの様子がずっとおかしいので私は気になって聞いてみた。
「お姉ちゃん、この前からどうしたの? 研究に行き詰ったとか? 私で分かる事だったら相談にのるよ」
「あ……あぁ、……たぶんもうちょっとしたらお前に相談にのってもらうことになるかもしれない」
「え? どういうこと?」
「だからその時がきたら話す」
「う……うん。だけど余り考え込まないでね」
でもこの時はまさか私が言ったこの言葉が自分に向けられる事になるとは全く思わなかった。


そして数日後
「シア、今時間があるか? お前に話がある。ちょっと付き合ってもらえないか?」
と言ったお姉ちゃんの目はこれまで見たことがないくらい真剣な目をしていた。
その迫力に押された私は
「う……うん、いいけど……」

私はお姉ちゃんの後について行く。
「何処に行くの?」
「……私の研究室だ」
「何があるの? というか何をするの?」
「……その時に話す」
前を歩いているお姉ちゃんの背中から只ならぬ気配を感じた。


「着いたぞ」
「ココは……何の研究をしてるの?」
「……クローン技術だ」
「クローン……って、お姉ちゃんが今研究していたのはこれだったの?」
「あぁ、これも一応ロストテクノロジーの一つに指定されているのでな。もっともこの技術も今はある程度確立されてきたからお前の空間跳躍技術と同じくこうして表に出してチームで研究する事になったのだが」
クローン……かつては神を冒涜する技術と言われ、倫理的にも問題のあることと言われていた。しかし、現在では医療とかにも応用できるという考えもあって重要な研究項目となっているとのこと。
「それで、この技術が私とどう関係があるの?」
「……これを見てくれ」
お姉ちゃんがコンソールを操作するとディスプレイに何やら幾何学模様の様なのが表示された。
「これは……もしかして遺伝子関係の?」
「あぁ、私がかなり以前にある人物の生体から取り出した遺伝子情報だ」
「ある……人物の生体……?」
「あぁ」
「かなり以前の人物って……ま、まさか!!」
「そうだ……これは朝霧達哉の遺伝子情報だ。先日やっと解析を完了した」
「そ……そんな……」
「……勝手なのは承知の上で採取させてもらった」
「もしかして……この前からお姉ちゃんを悩ませていた原因って……これ?」
「あぁ。ストレートに言うとこの遺伝子情報を使ってタツヤのクローンを作ってもいいものかどうか悩んでいた」
「……そうなんだ」
「それで、こんなことを頼んですまないとは思うのだが、シアにその判断を頼みたい」
「え……!!」
あまりの衝撃に言葉も出ない私は
「ごめん……すぐに答えは出せないよ。ちょっと考えさせてくれないかな?」
この言葉を絞り出すのがやっとだった。
「あぁ、勝手にこんなことをやっといて無責任とは思うのだができれば早めに答えが欲しい」

頭の中が真っ白になったまま研究室を出て行く私にお姉ちゃんは
「こんなことを言った後に言うのは何だが、あまり深く考え込むなよ……」
「……う……うん」

タツヤのクローン?!
ということはもしかしてタツヤが蘇る?!
愛するタツヤが……!
だけど……私のタツヤは四百数十年前に既に……
それに例え遺伝子は同じとはいえ新たに生まれてくるタツヤは本当にあの時のままのタツヤなのだろうか?
私はそのタツヤを本当に愛せるのだろうか?
それにこれはお姉ちゃんが頑張って研究してきたことの一つなのだ。
それを私の考え一つでパーにしてしまう。
どうしたらいいのか分からないよ……
どうしたら……
私はこのことで頭が一杯で食事も喉を通らず、その夜は全く寝れなかった。


そして……
私は考えた末、やっとのことで結論に達した。それから再びお姉ちゃんの研究室にやってきた。
目的はもちろんあの時の解答を出すためである。
「ん? シア、あまり眠れてないのか? 目が真っ赤だぞ……」
「寝ても寝なくても私達の目は赤いけどね。……っていう冗談は置いといて」
「よく考えたか?」
「うん、もう気が遠くなるくらいにね」
「分かった。それでは作りたくなければこのボタンを押せ。作りたければこのまま何もするな」
「ファイナルアンサー……だね」
「あぁ」

私は深呼吸して心の中で
『……さようなら、タツヤ』
と強く思いながら全てを吹っ切るようにボタンを押した。
次の瞬間、ディスプレイの幾何学模様は消えた。
これに関してはバックアップとかの類は一切とってなかったということなので、タツヤに関する一切の遺伝子情報は永久にこの世から失われた。
そして、私の瞳から大粒の涙が溢れてきた。
これでもうこの世で二度とタツヤと会うことはできないのだ……。

デリートボタンを押したまま俯いている私に
「これで……よかったんだな? シア」
「うぅぅ……タツヤ……」
「やっぱりお前のタツヤはあの時のしかいないんだな。もしかしたらクローンを作ったら私の研究成果の確認と共にお前のためになれば一石二鳥かなとも思ったんだが……」
「……ごめんね、お姉ちゃん。お姉ちゃんの研究成果を私のせいで……」
「なぁに、気にするな。それにこれがお前の出した結論だ。お前に判断を委ねた以上私はお前の考えを尊重する。まぁ、科学者としてはそんなんじゃダメなんだろうけどな」


タツヤ、ごめんね。
もしかしたら再会できたかもしれないのに……
もしかしたらあの時の記憶を持って生まれてきてくれたかもしれないのに……
だけど……私の愛するタツヤは500年前のあの時に存在していたあの姿でしかありえない。
いくら全く同じ遺伝子を持つクローンとはいえ結局は作りものであって、あの時私が愛したタツヤではない。

これからの私はタツヤとの思い出を胸にこの時代で精一杯生きるからね。
そしていつかは私も歳をとって最後はタツヤと同じところに行くでしょう。
そうしたら今度こそ本当に一緒になろうね。
だからそれまで待っててね。
ただし……いくら待ち遠しいからってそっちで他の女なんて作ったりしたら承知しないからね。





あとがき……みたいなの
ひさしぶりのシンシアものです。それもどちらかと言うと悲劇的な方向の……
やっぱりネタがダブると何となく面白くないのでこれまで見たことないネタを探すのも苦労します。
もっともこれがいいのかどうかはまた別な話ですけど……。
今回はクローンを作らない……という結論でしたけど、反対に実際に作ってしまうという選択肢もありですね。ただ……そっちの方面になると今の所、イマイチ絵が頭にうかんでこないです。

それにしてもシンシアの話は幾つか書きましたけど、どれも場面設定とかそれぞれ関連のない別の話ですね。


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『夜明け前より瑠璃色な-Moonlight Cradle-』は2009年2月27日に発売です。